クロガネ・ジェネシス

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第一章 エルマ神殿の依頼

 

火乃木とアーネスカ

 竜殺しの魔剣屋を出てから数十分。

 俺達は適当に食事を済ませるために適当なレストランにいた。

 昼時だけ会って人の出入りも激しく、中々活気付いている。

「なあ、なんでお前さっきから怒ってるわけ?」

「別に怒ってない!」

 怒ってるじゃねえかよ……。

「お前まさか……俺がネルと会話して嫉妬したとか言うわけじゃあないよな?」

「そそそそそそそんなことないよぉ? うん!」

 図星かよ……。思いっきりしどろもどろになってんじゃねえか!

「そそそそんなことより! 結局、剣どうするの?」

 火乃木が無理やりに話題を変えようとした。

 いちいち突っ込むのも面倒くさいので、俺はそのまま火乃木の話題変更に付き合うことにした。

「う〜ん……」

 店主やネルの言うとおり、新しく買い換えるより、鍛冶屋とかで修理したほうがいいのだろうか?

 俺としては新品の剣を存分に振るいたいところではあるが……。

「新しいものを買うことが、必ずしもいいこととは限らないよ。今使ってる剣にもうちょっとがんばってもらうのもいいんじゃないかな?」

「まあ、それもそうなんだけどな……」

「それに、レイちゃんだったら、剣なしだって強いし、十分戦えるから今のままでも十分だよ」

「お待たせいたしました」

 火乃木との会話の最中、注文した料理が運ばれてきた。

 俺はスパゲッティミートソース。火乃木はハンバーグステーキだ。

 ウェイトレスは手際よく料理と、注文したメニューの伝票をおいてその場を立ち去る。

「うわ〜美味しそう!」

 満面の笑みを浮かべ火乃木は自分の注文した料理を見る。まるで無邪気にはしゃぐ子供だ。まあ俺としてはさっきまでのような態度をとられるよりはこうやって子供っぽく笑っていてくれたほうが楽なんだがな。いちいち火乃木の嫉妬をなだめるのも面倒だし。と言うか嫉妬されるいわれなんかないし。

「お前またそんなん注文して〜……。デブるぞ」

「ボクは運動してるからそんなに簡単にデブらないよ。っていうかデブって言葉すごくイヤだからやめて」

「気にしてるならもっとヘルシーな料理を注文すればいいだろう」

「なに言ってるのレイちゃん! ボク達は旅をしているんだよ。食べれるときにしっかり食べておかなきゃ飢え死にしちゃうかもしれないじゃない!」

「そんな簡単に人間は死なねえって」

「万が一ってこともあるじゃない」

「不吉な予想ばっかりしてんじゃねえって! そんなこと考えてるからお前の胸は成長しないんだよ!」

「ぬぁにぃ! 人が気にしてること言うなー!」

「お前だって俺の身長のことズケズケと言ったくせに!」

「アレは不可抗力だからいいの!」

「都合の悪いことばっかり不可抗力にするなよ!」

「イヤ!」

「アチョー!」

 俺は再び火乃木の額めがけてチョップ一閃お見舞いした。

「あいたー!」

「お客さん!」

『!?』

 それは突然の一喝だった。

 あまりにも唐突に聞こえたその声は女性のものでありながらえらくドスが効いていてかなりビビった。

 声のしたほうを振り向くとさっきのウェイトレスが左手にお盆を乗せ、右手でアイスピックなんぞをもっている。なんか下手したらアイスピックを投げつけられかねない。そんな気がする。

「ケンカして店ん中で騒ぐんなら出ていきな!」

「は、はい……すんません……」

「ごめんなさい……」

 俺と火乃木は素直に謝った。そうでもしなければマジに命の危機を感じたからだ。正直ウェイトレスの目じゃねえ……。その手の方々の差し金かなんかじゃないかと思っちまったよ。

「とりあえずおとなしく食うか……」

「そうだね……」

 俺達はおとなしく料理に手をつけ始めた。

 さっきにウェイトレスに睨まれたせいだろう。中々お互いに落ち着いて会話するきっかけが掴めなかったりする。

 食事時はやっぱり静かにするべきだよな。

 と言ってもやはり、ずっと沈黙の中で食事を続けるのはつらいところがあるので、俺は適当に話題を振ることにした。

「なあ、火乃木。魔術の習得はどこまでいってるんだ?」

「え? う〜んっとね。今は炎系の攻撃魔法を勉強中かな」

「攻撃魔法か。随分レベルの高いところまでいったんだな」

「そ、そんなことないよ」

 照れているのか火乃木は少し遠慮がちにそういう。

「人に自慢できるほどの魔術じゃないよ。ちょっとした爆発を起こす火炎球を生み出すだけだから」

「まあ、あせる必要なんてないさ。一日に少しずつ前進する。大事なのはそこなんだから」

 俺はフォークをスパゲッティに突き刺してくるくると巻いて口に運ぶ。

「うん。そうだね……。ねえレイちゃん。これからお仕事どうするの? やっぱり魔術師ギルドに行って何か依頼もらってくるの?」

「今日は魔術師ギルドは休みの日のはずだから、明日あたり、何か依頼がないか探してくるつもりだよ」

「なんなら、ボクも手伝うよ」

「お前が役に立つような依頼だったら連れて行くさ」

「その言い方……なんか普段ボクが役立たずみたいじゃん……」

 火乃木が頬を膨らませる。

「時と状況によると言ってるだけさ。俺一人で片付けられるようなことなら俺だけでやるっていう話だよ」

「わかってる! ボクが役に立ちそうなときがあったら言ってね。これからの路銀を稼ぐためでもあるし、がんばるから」

「ああ、わかってるって」

 俺は再びスパゲッティにフォークを突き立てて口に運んだ。

 ……タバスコを少しかけてもう少し辛くしてもいいかな?


「ップハ〜もう食えねえ」

「美味しかったね〜」

 それから十分ほど。火乃木と軽い雑談をしながら料理を口に運びつつ、食事を終えた。後は会計を済ませるだけだな。

「ねえ、レイちゃん。この後少しだけ付き合ってくれるかな?」

「ん? どこに?」

「……その」

 火乃木は両手の指を適当に絡め合わせつつ言った。

「う、占いの館……」

 その台詞はなぜかとても言いにくそうに感じた。

「占いの館……ねぇ……」

「あ、イヤなら別にいいんだけどさ」

「イヤってことはないけど、何を占ってもらうんだ?」

「うん、新しいお友達ができるかな〜って思って……」

 友達か……。火乃木が友達をほしがるのは別段珍しいことではない。

 俺は平気だが、火乃木はまだまだ遊びたい盛りの女の子だ。だが、旅をしている関係上、一緒に行動をともにすることでもない限りは女の子同士の会話なんてそうそう出来るものでもない。

 だから、火乃木は友達と言うものを常に作りたがっているんだ。それで占い師にでも占ってもらうと言うわけか。

 まあ、それくらいなら付き合ってもいいか。

「ああ、わかった。付き合うよ」

「ほんと!? やったー!」

「火乃木! シーッ!」

「あ、そうか……」

 さっきウェイトレスに睨まれたからな。ここは静かにしておかないと。

「ごめん」

「っと。じゃあ、会計に進む前に、俺はちょっとトイレに行ってくるな」

「うん、わかった」

 俺は火乃木を席に残してトイレへ向かった。


 トイレの便座に座りながら俺は少しばかりボーっとしていた。

 友達ねぇ……。

 考えてみれば火乃木は積極的に友達を作って交流しようとしているよな。あいつああ見えて引っ込み思案なところあるけど、それでも友達を作るって結構勇気のいることなんだろうな〜。

 あいつの必死な姿を見ていると俺自身は大した動きをしていないように思うのはなんでだろうか?

 普段は冗談を言い合ったりふざけあったりする間柄なのに、マジな話になるとどうしてもこういうこと考えちまうぜ。

 ……それだけ俺にとってあいつが輝いて見えるのかな〜……なんてな。ガラゃないなこういうのは。

 俺達にシリアスは似合わないってな。

『ちょっとやめなさいよ! この娘困ってるじゃないの!』

『なんだお前。俺はこのお譲ちゃんに用があるんだよ! さっさと消えろ!』

 ん?

『消えるのはあんたのほうよ! その醜くて醜悪なツラで睨まないでくれる! やるってんなら表へ出なさいよ!』

 なんだ? 何が起こってる?

『こっちは商売でやってるんだ! こっちがスカウトしてない女は基本的にお呼びじゃないんだよ。……いや……お前よく見るといい肉付きしてるな。どうだ? お前も一緒にビジネスをやってみないか? お前の顔ならお客は絶対なびくって』

『決めたわ……今この場であんたをぶちのめす!』

 おいおいなんか随分物騒な会話だな! ここは俺がとめるべきだろう! 何を隠そう俺は正義と女性の味方! 男として紳士として戦士として、これは止めるべき状況であると見た!

 俺はさっさとズボンを上げ、トイレの水を流し、軽く手を洗うことを忘れずにトイレのドアを開けた。

 俺の目に飛び込んできた光景。それはやたら筋肉質……と言うよりマッチョな男とその後ろに数人控えた男達の姿と、それに対峙して睨んでいる金髪の女の姿だった。

 その金髪の女は火乃木をかばうように男の前に立ちふさがっているのだ。

 で、今金髪の女とマッチョ男の間ですさまじい火花が散っていて既に一食触発な状態だ。見ただけでそれがはっきりわかる。それくらい空気が張り詰めていた。

 マジに今にも殴りかねないほどの殺気が伝わってくる。

 止めるべし!

「ちょっとまったぁ!!」

 俺は声高らかに叫んだ!

『!?』

 店中の人間の視線が俺に注がれる。あ、なんか興奮してきたぞ……!

「おいそこのデカイの! 貴様の言動は先ほどトイレでたっぷり聞かせてもらった! 嫌がる女の子を無理やり連れ去ろうとしていたことは会話を聞いていて『なんとなく』理解したぜ! 大方水商売でもさせようって魂胆だったんだろうがな! やはり物事には順序と言うものがあると思うんだ! 誰しもイヤな事はあるし、やりたくないことやりたいことはあるというもの! それを無視して連れ去ろうというのは言語道断! いいか、処女というものはすべからくその女性が愛してやまない男に捧げるべきものである! したがってそれを無理やりに奪うことは人として男として大罪だ! 女を襲うことは男ならば誰でも出来る猿でも出来る! 貴様等は猿か!? 女を見れば誰彼襲ってしまう猿なのか!? 女を抱くということはそれ相応に男として責任ある態度を見せなければ……」

「れ、レイちゃん……」

「え? なにあんたの知り合い?」

「うん。レイちゃんは……こういう状況になると聞き取れないくらい早口でしゃべりだすクセがあるの……」

「変なクセねそれ……」

「であるからして正義と言うものは尊重されてしかるものであり、文化の基本要素だ! 正義の刃光るところに悪が栄えるためしなど存在しないのだよ! 異論は認めない! しかし時には何が正しくて何が間違っているのかわからないと言う時もあるだろう! そういう時は自らの胸に手を当て自らの行いを客観的に見つめてみるのもまた一興! いいかここにおいて重要なのは貴様等が男としていかに女性に優しく接するかということであり、そこに快楽と命の営みを……」

 と、俺が饒舌になってしゃべっている最中。俺の顔の真横を何かが通り過ぎた。

 それは……斧だった。俺の長話に男がかなり怒っているらしい。そいつが背中にしょっていた斧を思いっきりぶん投げたのだ。だが俺はそんなものでひるむほどおつむ小さくねえぜ!

「なんなんだてめぇはさっきからよ。正義だの悪だのと長々饒舌《じょうぜつ》になってえらそうにしやがってよ! お前が正義の味方!? 笑わせんじゃねえよ! 今てめえトイレから出てきたよな! トイレからやってくる正義の味方なんて聞いたことねえよ! てめぇはトイレの味方でもしてな!」

 男が言い終わると同時に男の後ろについていた男達がゲラゲラと笑い出した。

 別に俺はそれを屈辱とは思わなかった。

「クッ……トイレを侮辱するとは……おめぇ達人間としてまだまだだなぁ〜。それともてめえ達はやっぱり猿なのか?」

「何!?」

「いいかよくきけ! お前達はトイレと言うものがあるから人目を気にすることなく排泄行為を行うことが出来ると言うことを忘れていないか!? いいやそれだけじゃない! お前達はトイレがどれだけ崇高なものか、まったくわかっていない! トイレは排泄行為をする場所だけでなく、緩やかに物事を考えることが出来る偉大なる個室空間なのである! 個人宅のトイレもいいがやはり罪なのは公共トイレの個室だろう! 他人が近くにいて天井と足元に隙間があると言うのに、プライヴェートが保障されている矛盾に満ちた空間! 自らの恥部をさらけ出した開放感に浸りつつ、今後の生き方を考えるもよし、過去を振り返るもよし、壁に書かれている落書きを楽しむのもまた一興! しかも誰かに覗かれているのではないかというマゾスティィック! な要求にも覗きたいというサディスティィック! な要求にも応えてくれる、柔軟性がある! ここに速さは必要ない! 気持ちを落ち着かせ開放感に浸りながら便器と友だ……」

「うぅるせぇんだよぉ!」

 またも俺の顔の真横を何かが通過した。通過したものは鞘に納まったままの剣だった。

「てめぇ……」

 俺は怒りに震えた。

「人がせっかく話し合いで解決を望んでいると言うのに一方的に話を拒否するたぁいい度胸だな! あぁ!」

「いや、どっちかって言うと一方的にしゃべり倒していたような……」

「うん……そうだよねぇ……」

 火乃木と金髪の女がそんな会話を交わす。火乃木の奴、なんか知らない女と随分息が合っているように感じるのは気のせいか?

「そこ! とりあえず黙れ!」

 話がややこしくなりそうなんで火乃木と金髪の女にはとりあえず黙っていていただこう。

「お前なんかと話し合うつもりは毛頭ねえんだ! そんなわけだからよ。ちと黙っててくれねえかな?」

 柄の悪い、頭の悪そうな屈強な男のつまらない台詞。もちろんそんなもの、大人しく聞いてやる気はまったくない。

「そういうわけにはいかねえな……。何せお前等がスカウトとやらをしようとした女は俺の仲間なもんでね。黙って見過ごせねえのよ。それに嫌がる女を無理やりっつー根性腐った奴は校正のしがいがあるしな」

「……」

 おや? どうやら敵さん切れたみたいだな。

 ほんの少し前に比べて明らかに殺気が強まっている。目なんかもうやべぇな。白目むいてんじゃねえか? って言うか俺そこまで怒らせるようなことしたか?

「ほざいてんじゃねぇ!」

 悪役特有の雄たけびを上げながら大柄な男が俺に拳を突き出してきた。

 正直こいつとの体格には俺と比べたらはるかにでかい。

 相手はどう見ても190センチは超えているであろう長身。対して俺は、わずか156センチと男にしては小柄だ(ちなみに火乃木の身長は159センチ……かームカつくー!)。これでも二十歳《はたち》なんだけどな〜。背が伸びないってつらいね。

 もっとも体格がケンカにおいて絶対であることはない。

 俺はコイツを一発で落とす!

 男が殺気をはらんだ拳で俺に殴りかかる。だがそんな攻撃、俺の拳に比べたらはるかに……。

「遅い! はるかに遅いぜ!」

 言い放つ。男の単調な拳なんて当たらない。そんなもの交わせて当然! 俺は反撃として右の拳をは男の顎に目掛けて放つ。

 鈍い感触が拳に伝わると同時に、俺の拳はきれいにヒットした。

 と同時に男の巨体が動かなくなった。

「クッ……でかいだけでケンカに勝てると思うなよな……」

 男の巨体は糸の切れた操り人形のごとく、ゆっくりと地面に倒れ伏した。

 それを見ていたこの男の子分らしき連中も、火乃木も、さっき火乃木を守るために男の前に立ちふさがった金髪の女も、そしてそれ以外の人間もみな信じられないと言う視線を俺に向けた。

「う、うそだろ……」

「何が起こったんだ?」

 男の子分達が言った。

「脳震盪《のうしんとう》……。頭部または顎に対する衝撃によって発生する脳機能障害……。人間相手にケンカすんならこういうことを覚えておくとやりやすいのさ……。あーそうそう今は動かさないほうがいいぜー。きれいに入ったからなぁ。安心しろ。一週間くらい絶対安静で休めば元通りに動けるようになるさ」

 まあ実際に脳震盪が起こるかどうかは賭けだったんだけど、並みの人間に俺の拳を受けきれるわけがないからほぼ確実に起こるだろうとは思ったのだ。

 男達は今俺が倒した男を二人係で持ち上げる。逃げるためだろうな。間違いなく。

「お、覚えてろよ!」

「やだね。即効で忘れてやるよ!」

 あまりにもパターン化された捨て台詞をはき捨て男達はその場から退散して言った。自分達ではどうにもなりそうにないと思ったのだろう。

 まあ、あんな大柄な男が俺みたいなチンチクリン(自分で言っちまったよ!)にやられるなんて思ってもいなかったんだろうな〜。子分たちが不安になる気持ちもわかんなくはねぇわな。

 っとこうしちゃいられない!

「火乃木!」

 俺は火乃木の元へと駆け寄る。

「大丈夫か? あいつ等に何かされなかったか?」

「うん、大丈夫だよ! この人が……」

 言って火乃木と俺は金髪の女を見る。

「この人がかばってくれたから……」

「あぁ、あたし? いや〜そこのお兄さんほどの活躍はしてないよ」

 金髪の女はそう謙遜した。

 青いジーンズと黒いシャツの上から羽織った皮製のベストと言う活発な服装に、健康そうな白い肌。きれいな金髪と青く釣り目がちな瞳。そして俺や火乃木を上回る長身がこの女の全体的なプロポーションの良さを嫌というほど強調している

 正直いってこれほどの美人は中々いないだろう。もっとも俺には関係ない話ではあるが。

「トイレん中で聞いてたけどさ、あんたが火乃木をかばってくれてたんだろ? 礼を言うよ」

「そんな、別にいいのよ。結局あいつをぶちのめしたのは貴方だしね」

 まあ確かにそうなんだけどな。けど、この女が火乃木をかばってくれなかったら俺はひょっとしたらトイレにいながらにして火乃木と言う仲間を失っていたかもしれないんだ。ちゃんと礼はしないとな。

「あ、あの!」

 火乃木が意を決したかのように口を開いた。

「なに?」

「よ、よかったら……その……お名前を、教えてもらえますか?」

「あたしの名前? うん。いいわよ。あたしは、アーネスカ・グリネイド。貴女は?」

「ボクは、火乃木、白銀火乃木っていいます!」

 火乃木は少しばかり緊張しているようだ。しゃべっているときなんか肩に力が入って普通にしゃべれていないしな。

「そんなに緊張しないで。ヒノキっていうのね。わかったわ」

「は、はい……あの、それで……」

「うん? 何?」

 アーネスカはあくまでやさしく火乃木に接する。なんか親子の会話を見ているみたいだ。

「ボクと、友達になってください!」

 アーネスカは驚いて火乃木を見た。成り行きで助けた女の子に突然友達になってくださいと言われるとは予想していなかったからだろう。

「あたしとぉ? 別にいいけど……」

「! やったー!」

 火乃木は満面の笑顔で喜ぶ。本当にうれしそうだ。

「変わった娘ね」

「色々と事情があってさ、火乃木は友達少ないんだ。仲良くしてやってくれよ」

「ふ〜ん……まあ、いいわよ」

 アーネスカは快く返事をした。

「じゃあ、あたしはこれで行くけど。火乃木。もしあたしに用があるんなら。エルマ神殿に来なさい。あたしはそこにいるから」

「はい! わかりました! アーネスカさん」

「あ〜まったまった! 呼び捨てで言いし、敬語もやめて。もっと気楽でいいから」

「あ、う、うん。わかった」

「じゃあね!」

 アーネスカはそういって店から出て行った。

「俺達も行くか」

「そうだね」

 俺達もカウンターで自分達が食べた食事代を支払って、俺たちは店を出た。

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